第29回「埃に眼が入っただけ」
恥ずかしながら、最近プロットやシナリオを書いていると、泣くんですよ、僕。
別に仕事がツライとか、ホームシックになったとか、そういう訳じゃないのですけどね。
なんか、ちょっといい感じのシーンとか書いていると、思わず感極まって……
気がつくと、「バカな、この俺が涙だと……」状態です。
しかも、ちょっとウルってなるとかじゃなくて、ドーッと涙が出ます。マジで。
「涙などとっくの昔に枯れ果てたと思っていたのに……」とビックリです。
これ、会社だとちょっと気持ち悪い森田さんで済みますが、
喫茶店で作業している時に泣いていると、かなりの不審者です。
あるいは、彼女から「別れましょう」というメールを受け取った可哀想な人か。
なんにしろ、痛いです。ツライです。
でもこれって、シナリオとかノベルとか書いている人なら分かってもらえるかなと思って、
社内のシナリオ系のスタッフに聞いてみました。
「ねぇねぇ、自分でシナリオ書いていて、いい感じのシーンとかで思わず泣いたりするよね?」
という同意を求める僕の質問に対して。
「自分で書いていて? いや、それはないでしょう(あっさり)」
「笑うことはあっても、さすがに泣きはしないですよ(きっぱり)」
「そもそも、森田さんのシナリオ、泣き所が無いじゃないですか?(はっきり)」
「歳じゃないんですか?(ぐっさり)」
との事でした。
お、お前ら……人でなし!
まぁ、最後の2つは否定しないですけどね。
でも、歳か。ならしかたないな。
以上、完。
っていうのも味気ないので、このシナリオを書いていて泣いちゃうプロセスについて考えてみると……
これ、書いている途中で、リアルタイムで発生します。
ひどい場合は、涙で画面が見えなくなって、作業が中断するくらい。
書き手のタイプにもよるのでしょうが、僕の場合、キャラのセリフや会話の展開、ストーリーは書きながら決まっていきます。
格好よくいうと「キャラが勝手に喋り出す」ですが、まぁ、つまりは行き当たりばったりなんですけどね。
セリフを打ちながら、その先どうなるのかが、その時にならないと分からない。
だから、常にその瞬間のキャラクターの心情を、リアルタイムで頭の中に思い描いていきます(たぶん)。
そして、その時のキャラの心情に思わず共感しちゃうと、感極まっちゃうみたいですね(たぶん)。
つまり実際にはセリフになっていない部分。
キャラクターがそのセリフを発する時の心情に涙しているみたいなんです。
「多感な年ごろの少女か!?」なんですけど……
そりゃ、僕にしか分からない泣きポイントだよなぁ。
だって、最終的なセリフとしてテキストになってないんだもの。
つまり「行間で泣く」ですね。
なるほど、意味なし!
ということで、皆さんも喫茶店でパソコンに向かいながら泣いている人を見たら、
「あぁ、あの人は行間で泣いているんだな」
と、温かい目で見守ってください。
あと、レッドの皆さん、僕が机で泣いていても、仕事がツライわけじゃないので安心してください。